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2025年度第4回授業

どうなっているの?

 

みなさんが生きる国際社会

 

鈴木 庸一(すずき・よういち)先生

元駐フランス大使

令和7年12月14日(日)14:00―16:00

横浜市立大学YCUスクエアピオニーホール(横浜市金沢区)

受講者64人(4年生21人、5年生33人、6年生10人)

 

(以下、授業要約)

――外交ってなんだろう

きょうは、国際社会はどのように成り立っていて日本はその中でどう生きているのかという話をします。

外交官の仕事の目的は簡単に言うと「戦争をしない」ということです。戦争が起きたら外交官の仕事は失敗です。人が暮らしているとどうしても意見の違いが起きたり、損得でものを見るようになったりして争いが起きそうになります。そうした場合に規則を作って争いが起きないように解決していくことが外交官の大きな仕事の一つです。もう一つ、日本が世界で生きていく中で「日本はいい国だ」と他の国の人たちに思ってもらうことも重要です。今この会場には暖房が使われていますが、日本はエネルギーのほとんどを輸入に頼り、食料も6割以上を輸入でまかなっています。日本は世界から必要なものを調達してこなければならないのです。そのために外国に行って暮らしている日本人や海外で活動する企業を守っていくことも外交官の仕事です。

最近はAIが発達してきました。ものごとの判断をAIに任せたらいいのではと思う人がいるかもしれません。たとえばある国と別の国がむずかしい問題でぶつかったときに、AIは「戦争をして打ち負かすのが合理的だ」と答えるかもしれません。しかし、人間ならば戦争をすることをためらうはずです。だから、外交はAIにまかせられない、人間がやらなければならないのです。

 

――世界がもし100人の村だったら

 現在、世界の人口は約82億人です。その世界の姿を100人が暮らす村に縮めて考えてみると、日本の位置付けがよくわかります。まず、村人100人のうち58人はアジア人です。ついでアフリカ人が18人、ヨーロッパ人が9人、南アメリカの人が8人、北アメリカの人が5人います。最も多いのはアジア人ですが、内訳はインド人が18人、中国人17人、インドネシア人3〜4人で、日本人は1人です。日本人は人口の割にはお金を持っています。また、100人のうち大人は72人、子どもは28人です。このうち学校に行けずに6歳ぐらいから働かなければならない子どもが2、3人います。南アジアやアフリカ人の子どもは多くいますが、日本、韓国、ヨーロッパ、アメリカなどお金持ちの国の子は28人中3人だけです。貧しい国には子どもがたくさんいますが、豊かな国では子どもがすごく少ないのです。お金持ちの国の人は大人を含めても100人中14人しかいませんが、その人たちだけで世界のすべての財産の3分の2を持っています。それから、民主的な国、つまり国民が自分たちの代表を決めて自分たちの意思で国のあり方を決められる国に住んでいるのは28人だけです。ほかの72人は1人の強い指導者がいてみんなに相談せず決めてしまう国、あるいは指導者が誰もいない国です。

 

――国連の役割

 さて、日本では大体自由に飛行機に乗れるし、必要な石油や小麦などさまざまなものを船で運んでくることができます。飛行機や船は、どうして世界の空と海を誰にも邪魔されることなく行き来できるのでしょうか。80年ぐらい前はそうはいかなかった。「自分の国の上空や目の前の海を勝手に通ったら攻撃しますよ。攻撃されたくなかったら許可を取って相応のお金を払いなさい」と言われたのです。それでは人類全体が損をするので、国際連合(国連)国際的な規則が作られました。それが今の世界です。日本は海外からのものに頼っているし外国に行く人も多いので、その規則がきちんと守られないと経済的に困ってしまいます。今はロシアの上空は飛べません。戦争をして規則違反をしているからです。迂回する分、燃料を多く食うし時間もかかります。

 そういうルールを守って、世界が平和であってほしい、人々が豊かに暮らせるように社会を発展させたい、自分のやりたいことを自由にできる人権を守れる世の中にしたいということで国連があるのです。そこで話し合って、戦争をしている国があれば「やめなさい」と言うようにしました。国連は大きい国も小さい国も平等に扱うことになっています。みなさんが目にする世界地図は日本が真ん中に置かれています。別の国の地図はそれぞれの国が中心に描かれています。しかし、国連の旗に描かれた世界は地球を北極の上から見た地図です。どの国も平等だというしるしです。

ただ、ちょっと困ったこともあります。国際間の紛争を話し合う安全保障理事会(安保理)という組織があるのですが、そのメンバーにいつも入っている常任理事国という国が5か国あります。アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国です。この5か国は拒否権という権利を持っていて、この中のどこかの国が「ノー」と言ったらものごとを決められない仕組みになっています。

 

――なぜ戦争は起きる

 戦争がなくなったおかげで世界がより平和で豊かになったことはみんなわかっているはずです。それでも今ウクライナで戦争が起きています。今から3年前ロシアが攻め込みました。ウクライナはもともとロシアの一部でした。しかし、近年ヨーロッパの民主主義国が加盟するEU(欧州連合)と一緒になりたいと望むようになり、ロシアはそれを認められないと言っているのが争いの原因です。また、中東のガザでもイスラエルとガザが戦っています。ガザでは子どもたちが爆撃だけでなく、飢えでもたくさん亡くなっています。

なぜ規則を守っていた人類がここにきて戦争をするようになったのでしょうか。「ドラえもん」にジャイアンという子が登場しますね。トランプさんという人が大統領をしているアメリカという国はジャイアンによく似ていると私は思うのです。「ドラえもん」の中では、ジャイアンがケンカを止めてくれているおかげでまわりのみんながおとなしく、仲良くしています。これまでその役割を果たしてきたアメリカが、よその国に「仲良くしろ」と言うのをやめて「勝手にしろ」と言い出した、つまり、ジャイアンがお母さんに外にばかりいないでうちに帰って勉強しなさいと言われていなくなってしまったのが今の世界です。戦争をどう食い止めるか、ジャイアンに戻ってもらうのか、ジャイアンがいない世界を前提にみんなで考えるか、みなさんはどう思うでしょうか。

 

――地球環境はどう守る

 SDGs(持続的開発目標)のことはみなさん知っていると思います。2015年に国連が決めた目標です。2035年までに解決しようということでさまざまな取り組みが続けられてきました。今年はちょうど真ん中の年です。さきほどの「100人の村」でたとえると、食べ物がなくて死にかけている人はずいぶん減りましたが、まだ今でも8人が食べ物がありません。村に28人いる子どものうち、2、3人はまだ学校に通えていません。トイレが使えない人はまだ20人いて、村人の半数は今も安全な水が飲めないままです。電気のない人は15年の10人から減りましたが、それでもまだ6人います。ちなみに、日本では9割の家にエアコンが付いていますが、インドでは1割しか付いていません。

 さまざまな取り組みによって、困っている人は確かに減り、以前より暮らしやすい世界になったのは事実です。しかし、一方で別の問題が出てきました。もっと電力を使うから地球が暑くなってきたのです。暮らしが豊かになればなるほど工場や発電所が作られ、そこから出る二酸化炭素が増えてきています。それによって温暖化が進み、例えば南極の氷が溶けて海面が上昇し、気温が高くなって山火事が多発したり台風の被害がひどくなったりしています。他人事ではありません。日本は世界とつながっています。食料は4割しか国内で作れていません。エネルギーはほとんどが輸入です。調達先の国が温暖化の影響で食料の生産量ができなくなるとしたら、日本は別の方法で食料をまかなわなければならなくなります。食料には戦争も大きな打撃です。小麦はウクライナが有数の産地ですが、戦争の影響で自由に運び出せなくなり値段が上がりました。

 困っている人たちがより快適な生活を送れるように努力したら、それによって二酸化炭素が増えてしまいました。トイレが使え、安全な水が飲め、エネルギーを自由に使える、そんな世界を築こうとすると、同時に温暖化を防がないといつか地球が暑さに我慢できなくなって逆に住みにくい世界になってしまうかもしれません。どうバランスをとればよいのでしょう。日本には何ができるのでしょう。後半はみなさんにその解決策を考えてもらいます。 

 

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授業の後半は①どうすれば戦争を防げて平和な世界を実現できるか②困っている人を助けると地球が困り日本も困る。ではどうすればよいか――という二つのテーマのどちらかを選び、5、6人ずつのグループで解決策を話し合って発表しました。

テーマ①を選んだのは4グループ。「平和を実現するには国の代表が話し合いお互いの意見をわかりあうことが大切だ」「国と国とが交流を深めることで戦争をなくせる」などの意見が出ました。

テーマ②を選んだのは8グループ。「温暖化を防ぐために二酸化炭素の出ない地熱、太陽光、風力などの発電を進める」「地球の資源を必要以上に使わない」「日本のようなお金持ちの国がもっとエコのためにお金を使って、ちょうどよい豊かさを求めるのがよい」「教育に力を入れるのが大事」など前向きな声が集まりました。

 

最後に、鈴木先生は「ウクライナの戦争は2014年にウクライナのクリミア半島をロシアが一方的に併合したことが発端です。地球温暖化はCOP(コップ)と呼ばれる気候変動枠組み条約締約国会議が2015年に定めた目標を守れなかった結果、大変なことになっています。戦争も温暖化も10年前に最初の問題をみんなでちゃんと解決しなかったことで、ここまで大きな問題になっているのです。日本は国際社会の中で省エネの優等生です。努力して省エネや節電に取り組んだ人や国が恩恵を受けられるようなルールを日本が主導して作り、提案していくことが大事です。みなさんが大人になる10年後に戦争をなくし温暖化を緩和させる世界を実現できるか今からの行動が重要です」と課題の解決に向けた取り組みを託しました。